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日本の夏の風物詩の一つに「蛍」の鑑賞が挙げられます。
「蛍」が日本の文献に初めて登場したのは、およそ千三百年前、奈良時代に編纂された「日本書紀」の記述です。
但し、当時の蛍は、現在の印象とはまったく異なり、邪悪な神の象徴として描かれていたのです。
当時、日没後に地上で光を放つのは、「火」だけでした。
そのため、熱を発することなく青白く光る蛍は、得体が知れず不気味なものと考えられていたのです。
蛍の見方が変わったのは、平安時代になってからのことでした。
その頃、盛んに学ばれた漢詩には、蛍は「風情あるもの」として紹介されており、かっての悪い印象は払拭され、「愛でられる存在」になったといわれます。
時代が変わったといえ、蛍の性質が変わったわけではないでしょう。
変わったのは蛍ではなく、私たち人間の捉え方なのです。
現在を生きる私たちも、思い込みで人や物事を判断してしまうことはないでしょうか。
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