五分も変わらない

　Kさんは、通勤や営業の仕事で、良く車を運転します。

しかし、同僚も家族も、助手席に乗りたがりません。

　「運転がせかせかして落ち着かない」「車間距離をあまり取らないので、ぶつかりそうで怖い」

と同僚や家族は言うのです。

そう言われても、当のKさんは、意に介しません。この運転が当たり前だと思っているからです。

　ある日、Kさんは、上司と一緒に挨拶回りに出かけました。車で営業を出てからわずか数分後、

上司から「何か急ぐことでもあるのかい？」と聞かれました。

　「特にありません」と答えると、「それならもっとゆっくり走りなさい。ゆとりのない運転ではいつか事故をおこすぞ」と、窘められたのです。

　「急いで走っても、ゆっくり走っても、五分も変わらない。無事に帰ってくるのが一番だよ」
という上司の一言に、Kさんは納得しました。

　それからは、前の車に接近いることに気が付くと、＜五分も変わらない＞＜無事に帰るのが一番＞
と自分に言い聞かせて、安全運転を心がけています。